生態系に懸念 和歌山県田辺市でアフリカツメガエルが繁殖(2017年8月号)
朝日新聞2017年7月19日号夕刊の報道によりますと、和歌山県田辺市で外来種のアフリカツメガエルが大繁殖しているとのこと。なんとここ2年半あまりで、4500匹を捕獲・駆除しているそうです(左図はいらすとやさんから。まさかアフリカツメガエルがあるとは思わなかった。いらすとやさん、パネェ!)
このアフリカツメガエルは水棲で飼いやすく、ぼーっとした顔つきがかわいいのでペットとして人気があります。また食餌シーンがユーモラスなことで、よくテレビ番組でも紹介されています。というのは、彼らはカエルにあるまじく舌がないので、水中で口をカパッと開けて両手でわしわしと掻き込むようにして餌をとるのです。youtubeでペットとして飼育されている方たちが動画をアップされているので、一つご紹介します(魚魚魚さんのアフリカツメガエル)。
■何が問題なのか
さて、アフリカツメガエルが繁殖すると何が問題なのでしょうか。よく耳にする理由としては日本固有種との交雑や、固有種が必要としている環境を外来種が破壊することによる固有種駆逐があります。しかしアフリカツメガエルの場合は同じカエル類よりも、そのほか生物に与える影響がはるかに大きいのです。
その原因の一つが、先ほどユーモラスだとお話しした彼らの食生活にあるのです。アフリカツメガエルは田辺市ではため池で繁殖しています。そのため池にはヤゴ(トンボの幼虫)やゲンゴロウなどが生息しており、アフリカツメガエルたちはそれらの水生昆虫を大量に食べていることがわかりました。アフリカツメガエルが手当たり次第に補食しているとなると、これら餌となっている昆虫類の数が激減する危険性があるのです。
■なぜアフリカツメガエルが増えたのか
アフリカツメガエルはペットとして人気があるのは前にも書きましたし、生物学の研究用にも重宝されています。また大型熱帯魚の餌としての需要もあり、こうした需要を当て込んでの養殖もされているとのこと。じつは田辺市だけではなく、千葉県や兵庫県などでも野外で確認されたとの報告があるそうです。どうやら業者や個人が養殖していたアフリカツメガエルが逃げ出したり、捨てられたりした可能性が高いのですが、先ほど述べたようにすでに研究用や餌としての需要があるため利用規制も難しいというのが現状です。
環境省や農林水産省が指定する「生態系被害防止外来種リスト(pdf)」において、アフリカツメガエルは「総合対策外来種(国内に定着が確認されているもの。生態系等への被害を及ぼしている又はそのおそれがあるため、防除、遺棄・導入・逸出防止等のための普及啓発など総合的に対策が必要)」の内、「その他の総合対策外来種」に分類されています。つまり今は「対策が必要だけど、緊急性はない」というカテゴリにあるため、田辺市のように県立中学・高校とともに独自に調査・駆除している自治体はあるものの、
実際の対策はほとんど取られていない状態にあるようです。
もし野外でアフリカツメガエルを見かけた場合は、「総合対策外来種のアフリカツメガエルを見かけた」と各自治体の窓口(自治体により受け付けが違います) にお知らせください。