『和漢三才圖会』より蝌斗(かえるこ)(2019年2月号)
■江戸時代の百科事典『和漢三才圖絵』より「蝌斗(かえるこ)」
昨年11月号から連載している『和漢三才圖会』、今月は巻第五十四湿生類より「蝌斗(かえるこ)」(←コマ番号284をご覧下さい)をご紹介します。
■「蝌斗(かえるこ)」とは
活師(かつし) 活東(かつとう) 玄魚(げんぎょ) 懸針(けんしん) 水仙子(すいせんし)
[加閉流古(かへるこ)]
『本草綱目』(虫部、湿生類、蝌斗)に次のようにいう。蝦蟇(かえる)・青鼃(あおがえる)の子である。水中に生じる。二、三月になると、鼃・蟇は腸(はらわた)を水際の草の上に索(なわ)のように纏い曳き、そこに日日に黒点が見えるようになる。ようやく春水のときになって親が鳴きさわぐとそこから蝌斗がみな出る。これを聒子(かつし)という。蝦蟇(かえる)は声で子をかえすとはこのことをいうのである。その状は河豚魚(ふぐ)のようで、頭は円く身は青黒色。はじめて出てきたときは、尾はあるが足はない。稍(やや)大きくなると足が生えて尾が脱ける。大の月にはまず前の両足が生じ、小の月にはまず後の両足が生える。崔豹(さいひょう、中国、晋時代の百科事典『古今注』の作者)は、雷を聞くと尾が脱ける、というが必ずしもそうではない。およそ頭・尾をあわせて蝌斗をみると、斗(ひしゃく)に似た形をしている。それで斗という名がついているのである。これを搗(つ)いて泥状にし、髭・髪を染めると大へん効がある[青胡桃の子(み)の上皮を取り、蝌斗と和して搗き、泥状にしてこれを染める。一度染めただけで色が変わらないほどに効力がある]と。
△思うに、蝌斗は各処の池塘(いけつつみ)に多くいて、上述に説明してあるとおりである。黒縄のようなものが孚(かえ)って科斗となり、尾が脱けて足が生え小さい蝦蟇(かえる)となる。芒種(二十四気の一。いまの六月五日ごろ)の後、半寸ばかりの小蝦蟇(こがえる)が多く出てくる。畦を跳んでいるのは成長したものである。
■ちょっと解説
蝌斗、つまりは「おたまじゃくし」のことです。名前の由来がその形状からきていることが、『本草綱目』でも書かれています。文中の「大の月に前足」「小の月に後足」は、蛙へ変態する順序としては逆ですね。何かの伝承を元にした記述かもしれません。
おたまじゃくしと胡桃の実の皮を混ぜて搗いたものを髪染めに使っていたというのには、驚きました。