クラス便り7月号

 以前、「学級日誌」でご紹介したのですが、明治5年に出版された『西洋料理指南書』という本において、日本で初めてカレーの作り方が紹介されました。しかし、その内容には衝撃的な事実が隠されていたのでした。
 今月は、校長・教頭両先生と共に「日本初のカレー」について考察していきたいと思います。
カレー大好き
教頭:ここに新聞の切り抜きがあります。食べ物に関するコラムです。ここには「日本初のカレー」の作り方が載っているのですが・・・
校長:私はカレーが好きでありまーす。たくさん作っておなかいっぱい食べたいのでーす。教頭先生、その日本初のカレーとやらを、さっそく作って見ようではありませんか!
教頭:え・・・しかし・・・
校長:まっかせなさーい!さあ、さっそくレシピを読み上げて!
教頭:では・・・ネギとショウガとニンニクのみじん切りを、バターで炒める。
校長:ほいほい。
教頭:そこに水を入れて・・・
校長ひたひたくらいかな?
教頭:詳しくは書いてませんが、たぶんそうでしょう。
校長:それから?
お料理する校長先生
驚愕する校長先生
教頭:そこにエビやカエル肉を入れて煮込み、さらにカレー粉を加えて1時間煮るそうです。
校長:エビにカエル肉と・・・!?・・・カエル肉ぅ??
教頭:その後塩で味を調えてから、水溶き小麦粉でとろみをつけるんですってよ。
校長:わわわわ・・・・私は食べるのは大好きだが、食べられるのは苦手で・・・あわわわわわぁ〜!何で日本初のカレーがカエル肉を使っていたんだ??肉なら他にもいっぱいあるじゃないか!ええっ!?
教頭:そこなんです、校長先生。まず日本の食文化史を考えてみましょう。6世紀半ばに日本に仏教が伝えられてから、仏教の思想に基づき肉食がタブーとされるようになったのです。特に仏教に傾倒した聖武天皇が、四つ足の獣の肉食を禁じる勅令をだしてからは、庶民にまで浸透していきました。
校長:じゃあ、肉は一切食べなかった?
教頭:いえ、鶏や小鳥は例外でした。また平安貴族達は「薬猟」と称して、鳥以外の獣を捕って食べることもあったようです。しかしそれもだんだん廃れていき、ましてや庶民の食卓では肉は姿を消したのだそうです。
校長:しかし・・・戦国時代あたりだと、肉食をしていそうな感じだか?
教頭:ええ、安土桃山時代に南蛮文化が流入すると、織田信長などが肉食を奨励したようです。ただこの習慣も、江戸時代に鎖国令が出されてからは、やはり廃れたようです。
カエル仏とサル和尚(鳥獣人物戯画より)
困り切る二匹
校長:となると、肉食が再び日の目を見るのは、幕末ということか。
教頭:その通り!欧米各国から日本に来た人々が、肉食を広めたということですね。もっとも薩摩ではブタを食べる習慣が江戸時代からあったようですし、また最後の将軍徳川慶喜公は豚肉を食べるのが大好きだったそうですよ。ちなみに日本初の牛肉店は慶応4年(1868)に開業です。
校長:そして明治5年(1872)年に、くだんのカエル肉を入れるカレーのレシピが載った本が出版されたわけね。
教頭:その頃は、明治新政府が欧米各国に一人前の国として認めてもらおうと必死の時期で、肉食奨励政策なるものが打ち出されたそうです。
校長:なるほど、でもそういう時代背景なら、カレーに牛肉や豚肉が入ってもおかしくないよね?
教頭:確かにそうです。が、もう一度このレシピについて検証してみましょう。作り方は、カレーの故郷インドの作り方ではなく、イギリスのレシピです。当時使われていたカレー粉は、イギリスから輸入されていたようですし。
校長:イギリスか・・・イギリスではカエルがそれほどポピュラーな食材ではなかったと思うが・・・?あ、そうか、カエルをよく食べるのはフランスだな!
教頭:そうですね、幕末にはフランスが江戸幕府を応援していたので、そのフランス人達の影響も考えられます。しかし明治時代には、フランスと日本の関わりは薄くなるのです。そしてかわりにイギリスとの関わりが濃くなったのです。コラムの著者によると、イギリス人の元で働いていたであろう、中国人の影響ではないかと考えておられますが・・・
校長:ちょっとインターネットで調べてみたらどうかな?
教頭:あ、いいですね。ではさっそく・・・
ネット検索中
 と、こうしてネットで様々なキーワードで検索を試みた2匹(ふたり)は、ついにカエル肉の謎に迫る本があることを発見したのでした。
『カレーライスがやってきた』 森枝卓士文・写真 (福音館書店 1300円 初版1992/10/1)
 小学校中学年向きの本ですが、この本を入手したあかつきには、ぜひ皆さまにもこの謎の正体を明らかにしたいと思います。と言うわけで、今回は中途半端な考察で失礼しましたm(_ _)m

参考記事:朝日新聞2000年5月18日 「おかず100年史 味な日本近代史」 小菅桂子著

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