校長:「みなさん、こんにちは。僕らは田んぼの神様のお使いです」 教頭:「…最近この手の唐突なでだしが多い気がします。で、今月は何で私たちが田んぼの神様のお使いなんですか?」 校長:「よくぞ聞いてくれました(感涙)。ではご説明申し上げましょう。ときに教頭先生、僕らカエルをよく見かける場所ってどこですか?」 教頭:「まぁ、田んぼでしょうね。渓流や池に住むカエルさんたちも多いですが、人間の一番身近に住むとしたら田んぼでしょう」 校長:「でしょう?だから、お使いに選ばれたのです」 教頭:「はぁ」
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画像をもらうことができないから、興味のある人は 「たのかんさー」で検索してみてね。 |
校長:「つまりですね、古来より米作りをするうえで、豊作を祈願するためにいろんな方法が取られてきました。中でも多いのが直接「田の神様」にお願いすることです」 教頭:「なるほど、直接聞いてもらったら早いですからね。でも一体どんな姿形をしておられるのですか?」 校長:「それが「田の神様」は地方によって姿形が様々なんですよ。九州南部では、「たのかんさー」と呼ばれる石像がありますし、石川県の奥能登では、姿の見えない田の神様を家に迎え入れてもてなす「アエノコト」という行事があります」 教頭:「大事にされているんですね」 校長:「また案山子(かかし)が田の神様であるとする地方もあります。全国的には、地域全体で行うような大がかりなものではなく、水口祭という形で、個々の農家でお祀りする事例の方が多いと思います」 教頭:「ふーむ、となると、田の神様も他の神様同様、定まった姿はないと考えていいわけですね」
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校長:「ええ、そうですね。そして全国的に共通する田の神様のスタイルとして、春に田んぼへやってきて、秋には山もしくは任意の場所へ戻るという考えがあるのです。そのために、春に神様を迎え入れるための行事と、秋にはお帰りになる神様へ豊作を感謝する行事が存在する地域が多いですね」 教頭:「だいたい分かりましたが、その神様と私たちカエルとどう関係があるのですか?」 校長:「春にやってきて、秋になると帰る。ここから何か感じないかい?」 教頭:「あ…我々のライフスタイルと同じですね。春になると冬眠から目覚め、秋になると眠りにつく」
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校長:「そうです。こうして私たち田の神様と同じライフスタイルをしているカエルを通じて、神様にお願いする方法が考えられたわけです。先にお話しした水口祭のとき、陶器のカエルをお供えする地方があったり、茨城県や福島県では、秋(イノコロモチ、もしくはトウカンヤと言う、10月10日にある行事)に田の神様にお供えした餅は、カエル達が背負って神様のもとへ持っていくと言われています」 教頭:「ははぁ、目に見える存在に頼って、目に見えない神様へお願いするんですね」 校長:「他にも長野県の諏訪地方では、田の神様である案山子が旧暦10月10日に天に帰るので、その時カエルが餅を背負ってお供をするという言い伝えがあります」
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教頭:「きっと、私たちは昔から田んぼと関わりが深いから、神様のお使いとして思われたんですねぇ」 校長:「そうです。私たちカエルって、今も昔も田んぼとの縁が深いのですよ。けれども現在は、ほ場整備が進み、乾田が増えてきています。人間様は管理しやすいし、生産力アップにもなるようですが、これでは私たちが住むことはできません」 教頭:「悲しいことですが、年々私たちの仲間の生息数が減ってきているとの報告もあります」 校長・教頭:「以前にもお願いしましたが、どうかお互い共存できる環境を調えられたら、と願っております」
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