「この事件………………、なんだかね」 |
「……あのな、カエルの世界でもこんな話があるんだ」 |
ある池の中に、蛇と亀と蛙が、互いに親友としてすんでいました。
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ところが日照りになり、池の水がなくなって、食べ物もなくなって、
飢えてどうしようもなくなってしまいました。
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そこで、蛇が亀に蛙への伝言を頼んだのです。
「しばらくしたら、訪ねていきます」と。 |
蛙はこの伝言に「偈(げ)」(詩句の形式で、法理をのべた
もの)を用いて、こう答えました。「飢えて渇けば、仁義を
忘れて、食べることばかり思ってしまう。情けもよしみも、
通常のときのこと。こんな時に、よう訪ねてくるなぁ」と。 |
ほんと、危ない訪問だこと。グッと飲まれれば、どう思おうと、
生き返る道もないのだから。
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「これってね、『沙石集』という書物に載っている話なんだけど、
すごい含蓄のある話だよね。どうよ、人間さんよ…」
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