カエル娘画
京の蛙と大坂の蛙
天王山
(1)京都と大坂の境に、「山崎」という地があります。ここは古来より交通の要衝として栄えました。山崎には天王山という山があります。みなさんの中には、明智光秀と羽柴秀吉が覇権を賭けて争った「天正山崎合戦」の舞台として知っている人もいるでしょう。
この天王山からは、桂川・木津川・宇治川の三つの川が合流し、淀川として流れていく様子が眺められます。また山崎は良い水が出る場所として、サントリーの山崎蒸溜所や京都ビール工場もあります。工場見学へ行くと試飲できるので、見学者でいつもにぎわっています。
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(2)さて、昔この天王山で2匹の蛙が出会いました。一匹は京都の蛙、もう一匹は大坂の蛙です。お互い、京都・大坂見物をしようとして、天王山まで這ってきたのですが、疲れてしまいました。そこで「ここは名高い天王山。大坂も京都も見渡せる。お互いつま先立ち背伸びして見物すれば、足が痛いのも助かるに違いない」と、お互い肩を貸して立ち上がり遠くを見据えれば…
(3)
「音に聞えた難波名所も、見れば京にかはりはない。術ない目をして行ゆかうより、是からすぐに歸らう」 
といふ。大坂の蛙も目をぱちぱちして、嘲笑あざわらうていふやう、 
「花の都と音には聞けど、大坂に少しも違ちがはぬ。さらば我等も歸るべし」
『鳩翁道話』 柴田 鳩翁 校訂:柴田 実(東洋文庫)より
 

(4)なんと、蛙の目は後ろにあるので、彼らが眺めた方向が、自分たちがやって来た方角だったことに気付かなかったのです。

この蛙の目が後ろについていることから、次のようなことわざもあります。
「蛙の行列」
意 味:蛙が後足で立つと、目が後ろ向きになって前が見えないことから、向こう見ずな人々の集まり。

この遠くを見るために立ち上がった蛙の像は、大山崎ふるさとセンター(阪急京都線大山崎駅下車、徒歩1分)のロビーに飾ってあります。