小さきものにも目を向けて 〜歌川国芳 金魚づくし〜
( 1)歌川国芳は、江戸時代末期に活躍した浮世絵師です。国芳は浮世絵師として、普通に役者絵や美人画を描いていた時期もありましたが、水野忠邦の天保の改革でこうしたものが禁止されると、武者絵などに幕府への風刺を込めて描き、江戸庶民の喝采を浴びました。そして水野忠邦が失脚したあと、国芳は西洋画の技法を学び、様々なジャンルの絵に挑戦しますが、中でも動物(猫、金魚、蛸など)を擬人化して描いた作品は、今でも人気があります。とりわけ国芳は猫が大好きで、猫の作品が多いのも特徴です。
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歌川国芳wiki

(2)この左の1枚は、「金魚づくし」の9枚目で、外題を「ぼんぼん」と言います。ぼんぼん言うても、大阪の「おぼっちゃん」とちゃいますよ。
「ぼんぼん」とは昔の子どもたちの遊びで、 手を繋いで歌を歌いながら町内を歩いたといいます。その様子を金魚を擬人化したのが、この作品です。右下に、まだ尾っぽが残る幼いカエルが描かれていて、浮き草の団扇を手に、金魚のお姉さんに手を引いてもらっています。
実はこの作品、長年8枚組と思われていたのが、最近になってイタリアで9枚目として今作が発見されました。浮世絵は偶数組になることが多いので、どこかに幻の10枚目があるのではと、言われています。

(3)ほかの8枚の作品にも、それぞれカエルやオタマジャクシが描かれています。カエルは総じて、まだ尻尾がついた幼い姿をしています。
「酒のざしき」と題されたこの絵では、オタマジャクシが金魚の姐さんたちと一緒に踊っています。国芳は、カエルを捕まえてきて、庭に放してその鳴き声を愉しんでいたとか。しかしこのオタマ、後足ではなく、前足から生えていますが、これは描画上の演出でしょうか。
4)こちらは「まとい」。勇壮な火消しの兄さんたちを先導するのは、やはり尻尾の残った幼いカエルさん。藻でできたまといが、面白いです。

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