クラス便り3月号

 三寒四温と言いますが、2月末より暖かな小春日和の日が増えて参りました。かえるの学校でも暖かくなるたびに、みんなのテンションがあがります。さてテンションが高まりつつある今月は、一体どんな話題を提供してくれるのでしょうか?

 
いざ出陣!カエル合戦
校長:「はぁ〜お日様が暖かくなったねぇ〜」

教頭:「ほんとうに・・・。こういう日が増えてくると、早い地域ではカエル合戦が始まってるんでしょうな」

校長:「そういえば、先日の朝日新聞地方版にアカガエルの産卵が始まったことが報じられていたな」

教頭:「アカガエル類は2月末から4月にかけてが繁殖時期ですから」

校長:「ところでカエル合戦だが、最近はどんなもんだろうね」

教頭:「さようでございすね・・・その前にカエル合戦について皆さまにご説明申し上げた方がよろしゅうございましょう」


このような抱接を行うカップルがたくさん集まってきて、
その有様が合戦に見えたそうです。(GARA画)
教頭:「そもそもカエル合戦とは、カエル類、特にヒキガエルさん達の繁殖行動の様子を言いあらわした言葉であります。ヒキガエルさん達は2月から5月にかけて、自分たちの産まれ育った池を目指して集まります。そこでオスカエルはメスカエルの背中からガバッと抱きついて「抱接」という行動をとりますが、これがいわゆるカエルにおける結婚式なわけであります。この時のあちこちでオスカエルがメスカエルを巡って争ったり抱きつくのに必死で行動する有様が「合戦」のように見えたのでしょう。

 それにオスは毎年戻ってくるのに対し、メスは2〜3年に一度しか戻らないため、現場ではオスがメスの2〜3倍の数になり、数少ないメスをめぐって熾烈な争いになるわけです。

 その数少ないメスを確保するために、オスはしっかりメスに抱きつきますが、メスは抱きつかれても大丈夫な体の構造をしております。しかし運悪く抱きつかれる場所が悪いと、メスはオスに絞め殺されることもあります。またオス同士が抱きついた場合は「リリースコール(放免音)」を発して難を逃れますが、別の種類のカエルや魚・トカゲ類が抱きつかれた場合は、たいてい絞め殺されるそうです」

校長:「このカエル合戦の様子は江戸時代の俳人、小林一茶が句に詠んでますね。かの有名な
痩蛙 負けるな一茶 是に有り
ですね。この句には「蛙たたかひ見にまかる、四月廿日也けり」という前書きがついてます。ただし一茶が見たカエルはアカガエルだったみたいですが・・・」

ぼくは太っちょカエル

校長:「ぼかぁ、いつでも真剣勝負さ」
教頭:「食べるのに夢中で、ヘビが来ても
気付かないだけでしょ」
教頭:「また『古今著聞集』の「巻第二十 魚蟲禽獣第三十」には

「寛喜三年(1231年)夏 高陽院の南大路にして蝦合戦のこと」

 「寛喜三年夏の比、高陽院殿の南の大路に堀あり。蝦數千あつまりて、方きりてくひあひけり。ひとつがひひとつがひくひあひて、或はくひころされ、或はかたいきしてはらじろになりてありけり。またもまたもおほくあつまることかぎりなし。あるもの心みに、くちなわを一つもとめて、その中になげいれたりけるに、すこしもをそるゝ事なし。くちなはも又のまむともせず、にげさりにけり。京中のもの、市をなして見物しけり。ふるくも蝦のたゝかひはありけるとかや。」

とあり、ヒキガエル達の真剣勝負の様子が本文中には「かたいきしてはらじろになりて=息も絶え絶えになっておなかを見せている」と記されています。真剣勝負の真っ最中であることから、「くちなは=ヘビ」が投げ入れられても平気だし、かえってヘビの方が恐れをなして逃げていったことも書かれてます。この様子を当時の人々が見物に訪れ、見物人目当ての市までたつ有様だったということは、物見高いのは今も当時もかわらないということなのでしょう」

校長:「現在でもカエル合戦は続けられておりますが、残念ながらたくさんのカエルさん達が、移動中に輪禍にあうようになりました。また去年はこのルートを辿って池まで行けたのに、今年は家が建ってしまって通れなくなったなどという話も聞き及んでいます」

教頭:「個人のボランティアで、繁殖地へ移動するカエルさん達を待ちかまえて安全に移動させて下さる方もいらっしゃいますが、行政レベルでは我々カエルたちの安全は守られておりません」

校長:「海外では道路の下にカエルさん達が通れるようなパイプを通してくれたり、「カエルの横断注意」の看板を掲げているところもあります。またドイツでは移動するカエルさん達を保護するため、路線バスを1ヶ月運休させたりするそうです」

教頭:「我々カエルはグッズとなって全国各地で売られておりますが、本物のカエルさん達にとっては年々住み難くなってきているのが実状です。移動中の事故をはじめ、繁殖地が開発されてなくなったり、水質汚染でせっかく産んだ卵が育たなかったり・・・
 今はまだ身近でカエルさん達と出会うことができますが、数年先にはいったいどうなっていることでしょう。

校長:「日本でも、カエルを通じて環境問題を考える試みがありましたし、ここはひとつ我々の将来を人間様によろしくお願いしたいと思います。どうか皆さん、よろしくお願いいたします」


日本にこのような警戒標識が出る日は来るのか?