カエル娘画
最初は蛙!?
(1)
校長:「君、拳遊びって知ってるかい?」

教頭:「えーっと、ジャンケンのことですよね?」

校長:「そう、ジャンケンを含んだ、手で何らかの形を表して勝敗を決める遊びのことを言うんだ」

教頭:「というと、他にもバリエーションがあるのですか?」

校長:「日本にも数種類あるし、世界でもいろんな種類があって、文化人類学の立場から研究している人も少なくないのだよ。手だけではなく、全身で表したり、顔の表情や足などを用いることもある」

(2)
校長:「拳遊びには大きく二つに分けると、「三すくみ系」と「数拳」に分けられるんだ。いわゆるジャンケンは「三すくみ系」になる」

教頭:「なるほど、ハサミは石に弱くて、石は紙に弱くて、紙はハサミに弱い…見事に三すくみです」

校長:「そして「数拳」は、出した指の数で勝敗を決める」

教頭:「それなら5本が一番強い?」

校長:「いや、1から10で勝敗を競ったそうだ」

(3)
校長:「ところでこの三すくみ系の中で、「虫拳」ってのがあるんだ」

教頭:「虫?カブトムシとかトンボとか?」

校長:「いやいや、虫といっても昆虫を指すのではなく、小動物の総称としての「虫」という意味で、「蛙」「ナメクジ」「蛇」を用いた拳遊びを虫拳と言うんだ。手の形は図を見てくれたまえ」

教頭:「えーっと、ひとさし指が蛇、親指が蛙、小指がナメクジですね」

校長:「これはもとは平安期に中国から伝わってきたものに、江戸中期に「児雷也」ものが流行したことで、一気に広まったと言われている」

教頭:「児雷也=蛙(蝦蟇)、大蛇丸=蛇、綱手姫=ナメクジでしたね。前にも勉強した覚えがあります。2003年12月号と、2005年4月号を参照してください」

(画像提供Y.H様)

以前、描いた三すくみの図
(4)
校長:「三すくみは、中国の『関尹子』と言う古典の中に

螂蛆食蛇 蛇食蛙 蛙食螂蛆 互相食也

と出ており、お互い捕食関係にあるために、三者が互いに牽制し合って身動きできないことをいう。ただしここで出てくる「螂蛆」は、ムカデを指すようだが、どこかでこれがナメクジに入れ替わったらしい」

教頭:「蛙と蛇の関係はよくわかるのですが、ナメクジが蛇に強いってのが、わからないです」

校長:「これも諸説あるようで、ナメクジが這うとそこから腐って溶けるからとか、ナメクジのヌメヌメを蛇が嫌うから、蛇がナメクジを喰うと死ぬなど、よくはわかっていないんだよ。そういや、宮沢賢治の童話で『蜘蛛となめくじと狸』や『洞熊学校を卒業した三人』に出てくるナメクジは、けがをしたトカゲの足を舐めて治すと言って、食べてしまっていたな」

教頭:「ふーむ、そうすると、ナメクジが蛇を食べるという説は、けっこう広く伝わっているものなのかもしれませんね」

(5)
校長:「まあともかく、生徒諸君は今日からジャンケンにかわって、虫拳で遊ぶことをオススメしますぞ!」

教頭:「周囲に広めて、虫拳ブームを巻き起こしてね!」

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