井戸尻考古館(1) @ 長野県諏訪郡富士見町(2022年11月号)
■井戸尻考古館
土器。縄文土器といえば、縄目模様や火焔のモチーフなど思いつくでしょう。弥生土器なら、実用性重視のシンプルな感じ? だいたいこんなイメージをお持ちかと思います。
ところがですね、古代人の想像力・表現力は、一概なカテゴリ分けができないほどすごいのです。ということで、今月から2ヶ月連続でご紹介するのは、長野県諏訪郡富士見町にある
井戸尻考古館。こちらでは縄文時代中期の、井戸尻遺跡群から出土した土器などを展示しています。で、ここはかえるの学校。それらは単なる土器じゃあございません。そうなんです。この地域から出土した土器には、カエルが文様として装飾されているのです。
■なぜカエルをモチーフにしたのか
以前にも、古代人とカエルの関係をご紹介したことがありました。
クラス便り2011年3月号では、山口県内で、弥生時代の遺跡からカエル型の木製品が出土した事例を紹介しています。弥生時代は稲作が広がっているので、田んぼにはカエルと、その時代の人にとってカエルは身近な存在だったのではと推察しました。
その時にも言及しましたが、古代エジプトや中南米、中国でもカエルをモチーフとする装飾品や土器が出土しています(右の写真は黄河上流域から出土した土器)。特に中国では、蛙と月は不老不死の象徴(冬眠から目覚めるのと、月の満ち欠け)にされていました(
クラス便り2000年10月号)。そしてカエルは卵を多く産むことから、「多産=豊穣」を表すとみられています。また人と融合させた半人半蛙(はんじんはんあ)の架空生物もモチーフとなっていて、これらは胴体が女性器を表現していることが多く、やはり「女性(産む性)=豊穣」を意味すると考えられています。
で、今回は縄文時代。最近では、発掘調査で縄文時代の土器から籾殻が発見されるなどして、稲作は縄文時代から始まっていたとされています。ですので、井戸尻考古館でも、土器に「蛙」「半人半蛙」を文様として装飾することで、豊穣を意味したと考えられています。
■蛙文のある土器
では実際に収蔵されている土器のうち、今月は「蛙文」をご紹介します。こちらの考古館では、一部を除いて写真撮影が許可されているのです。桃型で二つの穴が空いているのが頭部。そこからいきなり長い足が生えています。蛙文は、胴体を省いて頭部と脚部だけで表現されているのも多くあります。
こちらの蛙文深鉢は、胴体もあり、頭部もよりカエルらしく表現されています。